適性

適性

鍼灸師の仕事では、体の痛みや不調を抱えた患者に対し、その症状を聞き、鍼や灸を用いた治療を施して症状の緩和・解決を目指していきます。

西洋医学の対処療法と異なり、「全人的治療」を行う鍼灸師には、治療技術の他にもさまざまな能力が求められます。主に以下のようなものです。

■基本的な適性

<コミュニケーション能力>
鍼灸の治療を行う上で大切なことのひとつが、問診などにおける「傾聴」と「説明」です。

症状だけでなく、患者の生活習慣や環境、行動などをつぶさに聞いて、治療の方向性を判断し、患者に分かりやすく伝える能力が求められます。

<観察力>
患者の言葉だけでなく、血色や姿勢、歩き方、声の調子など人全体をくまなく観察し、そこから何かを見つけ出す力も必要です。

医療行為ではどの業界でも大切なことですが、東洋医学ではとりわけ重要なポイントとなります。

<器用さ・几帳面さ>
鍼や灸、治療機器を扱う上で、正確な治療を行うためには手先の動きにも正確さと器用さが求められます。

経絡・経穴に正しく施術し、治療効果を最大限に引き出すためにも、丁寧で緻密な対応が必要です。

<清潔感>
治療に携わる人全てに言えることですが、「清潔感」は施術師の最重要事項のひとつです。患者に対する印象と、感染や事故を防ぐという両面で必須とされています。

身なり、服装といった外見的なことはもちろん、自分の身体および使う器具すべてに衛生面での気配りを怠らない人が鍼灸師に向いています。

■問題解決に向かう忍耐力・集中力

<トライアンドエラーを続ける力>
鍼灸の治療には正解がありません。効果があった時だけでなく、うまくいかなかったときの理由もじっくり研究し、解決策を考え、治療の精度を上げていく力が求められます。

<患者と二人三脚>
治療を進める上で、患者からの信頼を得ていないと良い結果は望めません。 どんな相手でも、時間をかけて信頼関係を着実に深めながら、心理的な面でのサポートもできる人が向いているといえます。

<インシデントを見逃さない>
治療行為で最も避けなければいけないのが治療上の施術ミスや、事故です。 大きなミスや事故に至る前段階のインシデントが発生した時点で、それに気づき、原因の追及をして対策を立てることができなくてはいけません。

■学び続ける力

<温故知新>
鍼灸の治療には、東洋医学に基づく独自の人体知識が必須ですが、同時に解剖学や生理学など西洋医学の知識も必要になります。 さらに、医学の進歩にも日々興味を持ち、それらを学びながら治療に反映させていく創意工夫も求められます。

<ニーズをつかむ>
医学の進歩と同様に、世の中も変化していきます。 現代病などの新しい病気や、不妊治療などの世の中の動き、美容鍼灸のような流行にも目を光らせ、それらの流れをつかんでいくことが鍼灸師としての成功への近道です。

<自分のスタイルを確立する>
鍼灸の世界で成功している人は、その多くが、それぞれ自分の治療スタイルを確立し、その根拠(エビデンス)も語ることができるスタンスを持っています。

経験の中で自分の発見を積み重ね、それらを統合して「自分流」の治療法を作り上げることができる能力が必要となります。

■その他の適性

<勘のよさ>
鍼灸の治療では、直接身体に鍼や灸を施します。人体の上に数百もある経穴に対し、正確に施術をするには、まずは経絡経穴に関する正しい知識が必要です。

しかし人の身体はそれぞれに異なるため、知識だけに頼っていても思ったような効果が得られないこともあります。

鍼灸は経験がものをいう世界でもありますが、それに加え施術師としての勘も求められます。 五感を活用して患者に向き合い、理論だけでなく感覚も含めて答えを導き出せるタイプの人は適性が高いと言えます。

<女性鍼灸師の強み>
鍼灸業界において、施術師として勤務している鍼灸師は、男女比に大きな差はなく、ほぼ半々です。

近年は美容やリラクゼーション業界でも鍼灸を積極的に導入していることもあり、女性鍼灸師のニーズも高まっています。

一般的な施術所においても、比較的女性の患者に対する施術がしやすい、という強みがあります。 月経や妊娠など女性特有の悩みについても、女性の施術師が対応することで、男性施術師に抵抗感のある人も院に呼び込むことができます。

また、ダイバーシティ(多様性)という点からも、男女比が程よく整った職場の方が、実務面でも職場の雰囲気の面でもバランスが取れ、結果として内容も効率も充実した仕事ができるようになると言われています。

今後、女性の鍼灸師はさらに増えていくと思われます。鍼灸師になる上で男女の適性差はないと考えて、積極的に業界に飛び込んでいきましょう。

■施術所以外での適性

以上、鍼灸師の適性について述べてきましたが、施術所以外での勤務の場合には、それぞれの職場に応じた適性が必要になることもあります。

職場別の適性は、たとえば以下のようなものです。

<医療施設>
医療施設に勤める場合、施術は独自の判断ではなく医師や理学療法士などと連携して行うことになります。 従って、鍼灸院などの施術所よりも、西洋医学・現代医学の技術と知識を積極的に取り入れる学びの姿勢が必要になります。

また、医療施設は施術所と比べて組織の規模が大きいため、業務の処理方法や情報の伝達・共有、職場の人間関係など、様々なシーンで組織への適応力が求められます。

<介護福祉施設>
特養など介護福祉施設で働く場合は、高齢者のケアが仕事の中心になるため、一般的な患者に接する時以上に優しさと思いやりが必要です。

同時に、こちらの意図がなかなか伝わらなかったり、伝えた内容を忘れられたりすることもある上、施術や訓練の効果が現れるのにも時間がかかります。根気や忍耐力が求められる職場です。

<企業>
企業でトレーナーなどとして勤務する場合、患者と施術者ではなく、会社と顧客という関係の上で仕事を遂行することになります。

医療や福祉と比較して、サービスを提供する上での意識や、所属する企業のために利益を追求するという姿勢が異なるため、自身の個性がどちらに向いているか、という資質を見極めることが大切です。

■独立開業する場合

独立して鍼灸院などの施術所を開業する場合は、施術者としての素養に加え、経営者としての能力も問われることになります。

どんなに優れた鍼灸師であっても、経営が赤字では継続できません。 初期投資や財務の管理、経営計画など、経営者としてのセンスと、経営そのものを楽しむことができる資質が求められます。

また、施術所の経営には集客が欠かせません。 一人でも多くの患者に足を運んでもらうために、的確なメッセージを発信する宣伝力も必要とされます。

さらに、施術所を事業として成長させていくためには、人を育てていかなくてはなりません。 リーダーシップがある、面倒見が良い、人に教えるのが得意、といった人が、経営者にも向いています。

鍼灸は、投薬や手術を伴わない治療法として、アジア諸国だけでなく、欧米でも信頼を集めています。 昨今は美容鍼灸など治療以外の側面も注目されており、今後も発展が期待されている技術です。

東洋医学を学び、その知識や技術を大切に守りつつ、新しい感性も取り入れて時流に合わせて成長できる人が、鍼灸師として大成できる素質があるといえます。

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