
スポーツトレーナー
鍼灸師の活躍の場は広がりを見せており、その中でも注目されているものが「スポーツトレーナー」という職種です。
特に若い世代からの人気が高い、この「スポーツトレーナー」とは、どのような仕事をしているのでしょうか。
■スポーツトレーナーの仕事
「スポーツトレーナー」は、「アスレティックトレーナー」「フィジカルトレーナー」などとも呼ばれ、狭義ではスポーツ選手やチームの運動指導、及びケガの治療や予防を行う人を意味します。
広義では、スポーツジムやフィットネスクラブで、トレーニングする人達の指導や補助を行い、健康をサポートする人(インストラクター)や、一般の人達に向けてメタボ予防など健康維持のための運動指導を行う人も含めて、スポーツトレーナーと呼ばれます。
スポーツトレーナーの主な仕事内容は、下記のようなものです。
・トレーニング指導
・ケガの治療と予防
・リハビリ指導
・食事・栄養管理
・生活指導、など
これらのことを、知識と経験を元に自らの判断で行います。
鍼灸やマッサージなどの施術は状況に合わせて行い、トレーニングやリハビリの際にはプログラムを作成、必要に応じてテーピング、アイシング、ストレッチングなどを施します。
■スポーツトレーナーの資格
スポーツトレーナーは国家資格ではなく、日本では職業としての明確な定義がされていないため、資格が無くてもスポーツトレーナーになることは可能です。
ただし、資格を持たず、実績や経験もない人がスポーツトレーナーを名乗って仕事をするのは現実的ではないので、鍼灸師などの国家資格や、民間の資格、あるいはその両方を取得して現場での経験を重ねながらキャリアを磨いていくのが一般的です。
民間の資格は、さまざまなものが存在します。団体によって性格が異なるので、自分が目指す方向にマッチした資格を取得すると良いでしょう。
はり師・きゅう師やあん摩マッサージ指圧師、柔道整復師は国家資格であり、養成機関で規定の教育を受けていること、及び故障や不調への対処療法だけでなく、人の全体を見て、生活のあり方まで含めて判断する東洋医学の視点を持つこともあり、スポーツの世界にも貢献できるものです。
スポーツトレーナーの資格とこれらの資格を併せ持つことは、大きな強みになるといえます。
■これからの展望
現在は、はり師・きゅう師やあん摩マッサージ指圧師、柔道整復師の資格を取ってプロのスポーツトレーナーになる人はそれほど多くはありません。
収入や仕事としての安定の面、活躍の場が限られていること、ある程度のキャリアが必要とされること、などが理由として挙げられます。
その反面、スポーツ先進国アメリカでは、スポーツトレーナーが職業のジャンルとして確立されており、プロスポーツの現場から学校の部活動に至るまで、幅広い活躍の場があります。
アメリカのスポーツシーンに追従している日本でも、今後このような流れが取り入れられていく可能性は大いにあります。
現在でも、テニス、バスケットボール、フットボールなどプロスポーツのシーンで、アメリカを拠点に活躍する日本人のプロトレーナーが存在します。
また、職業としてのスポーツトレーナーの進歩は、オリンピックの歴史と歩みを揃えています。
2020年の東京オリンピック開催に関連して、今後スポーツへの注目度がさらに高まり、スポーツ人口が増えることと相まって、スポーツトレーナーの活躍の場が広がることも期待されています。
■スポーツトレーナーになるには
スポーツトレーナーには、必須とされる資格などはありませんが、民間資格はいくつか存在します。
また、鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師、柔道整復師といった国家資格も、トレーナーになるために有効なものです。
プロのスポーツトレーナーになるためには、まずこういった資格を取得し、人の体について精通していることが必要になります。
その上で、自分が貢献したいと希望しているスポーツチームや団体、企業などに対して就職活動を行います。
施術師の養成施設の中には、プロトレーナーの養成コースや、就職サポートを行っているところもあるので、入学前にそういった情報も抑えて学校選びをすると良いでしょう。
スポーツチームや企業などに就職することができたら、現場で経験を積んでいくことから始めます。
自分がサポートした選手が結果を出したり、ケガなどから回復させることができれば、それがトレーナーの実績にもつながります。
このような実績を積み重ねることで、より高いレベルの選手をサポートできるようになり、その繰り返しがトレーナーとしてのステップアップになります。
■収入
スポーツトレーナーの収入は、勤務する形態や就業先によって大きく異なります。
スポーツチームや団体、企業に所属するトレーナーの場合、年収は300万円から1,000万円以上と大きな幅があります。これは、経験や実績によって収入にも差が出るためです。
また、一般企業のトレーニングジムなどで働く場合、所属する企業によって幅があり、年収で250万~400万円程度です。正規従業員か、パート、外部委託などの非正規従業員かによっても異なります。
公共施設のトレーニングルームや体育館などで活躍するトレーナーは、嘱託や契約社員として働くことが多いため、200万~350万円ほどの年収になります。掛け持ちで働く人も目立つようです。
どのような職場で働くにしても、キャリアと実績によって収入は大きく変わります。トレーナーとしての仕事を長く続けて、結果も出している人が安定収入も得られている、ということになります。
■メンタル面でのサポートも
選手と接する時間が長いスポーツトレーナーには、選手に対する精神的サポートも任されることがあります。
スポーツ選手は、試合前の緊張や、失敗した時のダメージ、練習の結果が伴わない時のプレッシャーなど、常に精神的ストレスのもとにあります。
こういった選手のメンタル面を支える「スポーツメンタルトレーナー」という職業があるのですが、日本ではまだ浸透していません。
そこでスポーツトレーナーにその役割が託されることがあるのですが、身体面でのサポートとは全く異なるため、新しく学ぶことが必要になります。
心身の両面で選手をサポートできる能力があれば、所属しているチームや会社からの信頼も高まり、トレーナーとしても大きくステップアップできます。
■仕事のやりがい
スポーツトレーナーの仕事は裏方としての役割がほとんどですが、自分がサポートした選手が良い成績を出せた時には、何物にも代えがたい大きな喜びが得られ、それが仕事へのモチベーションにも繋がります。
また、国内ではまだ充分に認知されていない仕事でもあるため、自分たちがこれから業界を成長させていくという気持ちで仕事に打ち込めます。
そういったやりがいに加え、スポーツトレーナーの仕事は、日々反省と自己研鑽、学びの連続です。そのため色々なことが身につき、自分自身の成長も感じられる機会が多くあります。
プロスポーツの世界では、ドーピング問題などもあり、薬物の使用に制限が設けられ、規則も年々厳しくなっています。
それに対し、投薬を伴わない東洋医学のアプローチが今後さらに重要視される可能性もあります。そういった面でも、今後注目していくべき職種です。