鍼灸院・鍼灸整骨院

鍼灸院・鍼灸整骨院

はり師・きゅう師の勤務先として最も多いのは、「鍼灸院」などの施術所です。

鍼灸治療だけでなく、柔道整復師による治療をあわせて行っている施術所などで「鍼灸整骨院」といった複合型の屋号を掲げている場合もあります。

鍼灸師は国家資格であるため、施術所も国の規制のもとで運営する必要があります。以下、施術所の現状、概要などを示します。

■施術所の概要

平成28年末時点の全国調査で、「鍼灸を行う施術所」は28,299ヵ所、「あん摩マッサージ指圧及び鍼灸を行う施術所」は37,780ヵ所ありました。同年の、就業中のはり師は116,007人、きゅう師の数は114,048人という結果です。

遡って平成18年の調査では、「鍼灸を行う施術所」は17,794ヵ所、「あん摩マッサージ指圧及び鍼灸を行う施術所」は34,517ヵ所で、就業はり師は81,361人、きゅう師は79,932人という結果でした。

比較すると、「鍼灸を行う施術所」の数は10年間で約1.6倍、「あん摩マッサージ指圧及び鍼灸を行う施術所」は約1.1倍です。就業者数では、はり師・きゅう師ともに約1.4倍という増加率になっています。

今後も、人数・施術所数ともにゆるやかな増加傾向が続いていくと見られています。こういった状況の中で、自費診療への対応、付加サービスの多様化など、時流に則った院の経営が求められるようになります。

■施術所の届出義務

鍼灸の施術所は、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(以下・あはき法)の規定により、開設した際に届出義務があります。

<あはき法・第9条の2より>
施術所を開設した者は、開設後十日以内に、開設の場所、業務に従事する施術者の氏名その他厚生労働省令で定める事項を施術所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない。その届出事項に変更を生じたときも、同様とする。

この届出を怠ると、処罰(30万以下の罰金)の対象となります。また、訪問鍼灸を専門として、施術所を開設しない場合も、同様の届出義務があります。

■院で行っていること

鍼灸の施術所での治療対象は、主に神経痛や腰痛、リウマチ、五十肩などといった、慢性的な体の痛みや不調を抱える人達です。

そういった患者に対し、鍼灸師が問診・視診・触診を行い、鍼や灸での治療と物理療法、必要であれば手技を行います。

さらに、日常生活に関する指導や回復に向けての治療計画づくりなども実施し、院の事務や雑務なども行います。

他に、美容鍼灸、不妊治療、全身の治療など、自費診療を取り入れている施術所も増えています。鍼灸が持つ強みや、ニーズの広がり、院の特色やスタッフの特性を活かした施術を取り入れて、他院との差別化を図るのが狙いです。

■保険診療と自費診療

施術所においては、患者に対して2つの診療方法で対応しています。「保険診療」と「自費診療」です。

<保険診療>
国によって認められた内容に沿って、保険を適用して行う施術です。規定された範囲内で、医師の同意を得たものであれば健康保険などによって患者負担分を軽減した施術を行うことができます。

<自費診療>
上記の保険診療以外は全て、療養費を患者が全額負担する「自費診療」となります。規定外の症状や、リラクゼーション、予防医療、美容などを目的としたものはこれにあたります。

自費診療は、施術内容に制限がないため患者の要望も受け入れやすくなり、施術所側にも、施術内容を自由に設定できる、料金を自己判断で決定できる、療養費の入金が遅れない、などのメリットがあります。

しかし患者の料金負担は大きくなり、施術所も自費診療のみで運営を続けるのは容易ではありません。

■保険適用の療養費

現在、施術所で保険診療を行った際の療養費処理は、患者が施術者に療養費を全額支払い、その後に患者自身で保険者に対し保険者負担分を請求する「償還払い」が原則となっています。

ただし、保険者への請求処理など患者の負担が大きいため、平成30年度から鍼灸業界にも「受領委任」制度の導入が認められました。

受領委任とは、償還払いにおける患者の負担を軽減するために、施術者(又は代理の団体)が療養費の保険該当分を一時的に負担して、後に保険者へ請求する、という方法です。

この受領委任制度は、整骨院など柔道整復の施術所では以前から導入されていました。

近年、施術所の不正請求問題などが相次いだため、防止対策が検討され、その結果として公的機関の管理がしやすい受領委任制度が鍼灸の施術所にも導入されることになりました。

実際に鍼灸の施術所で導入される時期は、平成31年の1月からとされています。

■施術所の広告

「集客」は、どの施術所にとっても重要事項です。どんなに良い施術を行っていても、来院者が少なければ経営は続けられません。

集客には広告が欠かせません。しかし、施術所の広告は、あはき法の第7条で、次のように規定されています。

あん摩業、マツサ-ジ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、次に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。
(1)施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
(2)第1条に規定する業務の種類
(3)施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
(4)施術日又は施術時間
(5)その他厚生労働大臣が指定する事項

上記以外にも、「医療保険療養費支給申請ができる旨」「休日又は夜間における施術の実施」「予約・出張による施術の実施」など、具体的に広告可能な事項が定められています。

この法律に違反すると、処罰の対象となります。その範囲内で、チラシや雑誌、Webなど様々な媒体を利用して自院の存在をより多くの人に知ってもらうことが必要となります。

■追記 ~広告規制強化の動きについて~

平成30年5月、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」(以下・検討会)が発足し、施術所の広告見直しに関する議論が始まりました。

施術所の広告については、業界の内外で、法の規定が遵守されていない、という指摘が上がっていました。

また、医業の広告は平成30年6月に規定が改正されることもあり、こういった動きを受けて、施術所の業界においても見直しをする動きになったものです。

この検討会の中で、施術所の「治療院」「メディカルセンター」といった医業に紛らわしい呼称は適当でないという指摘もされています。

また、「女性専門」「レディース治療」のように性別を強調するものや、「身体機能を向上」といった効能をアピールするもの、割引の表示なども指導対象の事例とされています。

今後、検討会は議論を重ね、平成31年度には新ガイドラインを施行、約1年の周知期間を経て、平成32年度から本格的な取り締まりを行う予定となっています。

その中で、「あはき・柔整を医療類似行為として扱うべきか否か」といった、従来から議論の対象となっているテーマも取り扱われる模様です。

議論の結果がどうなるにせよ、施術所の広告規制が現状より厳しくなることは避けられないと思われます。

検討会の結論を待ちつつ、今後の広告戦略などについて、施術所単位でも早めの準備を整えておく必要があります。

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