
国家試験
「はり師」「きゅう師」は共に国家資格です。
国家試験に合格した人でなければ、業として施術を行うことはできません。
■年1回実施の国家試験
はり師・きゅう師の国家試験を受験するには、国の規定に基づき、下記の要件に適合していることが必要になります。
・学校教育法第90条第1項の規定により大学に入学することができる者
・上記に加え、3年以上文部科学大臣の認定した学校、又は厚生労働大臣の認定した養成施設(専門学校)で必要な知識及び技能を修得した者
このように、はり師・きゅう師になるためには規定の教育を受けることが必要となっており、独学などによる勉強では、国家試験を受験することができません。
試験は「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に基づき厚生労働大臣が行うものとなっていますが、実際の運営や事務は、同法規定により指定された「公益財団法人 東洋療法研修試験財団」(以下・財団)が行っています。
従って、受験申込から免許の取得までは、財団に申込や手続申請を提出することになります。
はり師・きゅう師の国家試験は、毎年1度、2月に実施されます。試験日程は、9月頃に厚生労働大臣名義で発表され、厚生労働省及び財団のホームページに掲出されます。
■受験に関する流れ
はり師・きゅう師の国家試験を受験し、免許を取得するためには、以下の手順を踏む必要があります。
1.必要な書類を揃え、財団に提出・送付する
必要な書類の内訳は、受験願書、写真、入力票、卒業証明書または卒業見込証明書です。
受験願書には、受験手数料振込の証明書又は明細書貼付が必要です。
2.受験票の受領
上記の書類送付後、受付が完了した人に、財団から受験票が郵送で送付されます。
3.必要な持ち物を準備し、試験実施日に会場で受験
必要な持ち物は、受験票、HBの鉛筆、消しゴム、昼食です。
4.合格発表の確認
発表の方法については、下記「合格発表・免許取得」の項を参照。
5.合格者は、免許交付の申請(名簿登録)を行う
試験は通常、午前の部・午後の部に分けて、1日を通して実施されます。平成30年実施の試験時間は、9時~11時と、13時10分~15時10分となっています。
また、試験会場は全国各地の指定された場所です。
平成30年実施の試験では、北海道、宮城県、東京都、新潟県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、鹿児島県、沖縄県の11会場で実施となっています。
具体的な場所は財団のホームページに掲載されています。
在住地域の近隣で実施されていない場合は、上記の中から受験地を選び、現地に出向く必要があります。
最新の試験の具体的な場所や時間は、財団および厚生労働省のホームページ上で事前に公開されます。
受験する人は確認しておきましょう。
■合格発表・免許取得
合格発表は、3月の末頃に行われます(平成30年実施の国家試験合格発表は3月28日)。
発表の方法は、厚生労働省と財団での掲示、及びホームページへの掲出です。
合格したら、迅速に免許を取得する必要があります。
国家試験に合格しただけでは、はり師・きゅう師として仕事をすることはできません。
厳密には、免許取得の申請ではなく、はり師名簿・きゅう師名簿への登録申請をすることになり、各名簿に登録されることが、そのまま免許交付につながります。
名簿への登録も、財団が行っています。
登録申請は専用の書式をもって行う必要があり、財団に送付請求を送って取り寄せることが可能です。
また、申請書の他にも医師の診断書や登録免許税、手数料などが必要になります。
試験に合格したら、すみやかに登録申請の書類を整え、免許取得の手配をしましょう。
※上記は全て平成30年6月時点での内容です。
また、本内容は晴眼者対象のものとなっており、視覚障がい者は試験時間、持参品などが異なります。
詳しくは財団ホームページをご確認ください。
→ 公益財団法人 東洋療法研修試験財団ホームページ へ
■「国家資格」の定義
ここまで、鍼灸師の国家試験について述べてきましたが、そもそも国家試験の合格で取得できる「国家資格」にはどのような特徴があるのでしょうか。
<国家資格>
国家資格とは、法律などによって定められ、国から認定を受けた人にだけ与えられる資格を意味します。
施術業界においては、鍼灸師をはじめ、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師の免許も国家資格であり、医療における医師や看護師、薬剤師、理学療法士なども同様です。
他の業界にも、数多くの国家資格が存在します。以下のようなものです。
[国家資格の例]
弁護士、弁理士、行政書士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、一級建築士、保育士、社会福祉士、介護福祉士、栄養士、調理師、測量士、不動産鑑定士、マンション管理士、など
これらの国家資格を得るためには、国によって定められた試験・審査を通過する必要があり、基準に合格した人でなければその資格を名乗ることはできません。
<公的資格>
国家資格に準じる位置に、「公的資格」というカテゴリーが存在します。
これは、民間の会社や団体が実施して、国や自治体が認定する、といったように、公的機関が何らかのかたちで関わっている資格です。
資格としての境界にも曖昧な部分がありますが、代表的なものとしては以下のような資格が挙げられます。
[公的資格の例]
実用英語技能検定(英検)、ケアマネジャー(介護支援専門員)、食品衛生責任者、簿記検定、カラーコーディネーター、など
<民間資格>
前述の2つに対し、企業や団体・個人が独自の基準を設け、業界の発展などを目的として設定しているのが民間資格です。
たとえば整体師、スポーツトレーナー、アロマセラピスト、リラクゼーション施術にまつわる資格などはこれに該当します。
また、カイロプラクターはアメリカでは国家資格に該当するものですが、日本では民間資格という位置づけになります。
他にも、民間資格の代表的な例としては以下のようなものがあります。
[民間資格の例]
臨床心理士、野菜ソムリエ、フードコーディネーター、エステティシャン、ネイリスト、インテリアプランナー、ダンスインストラクター、など
TOEICやTOEFLなどの英語検定は、テストの採点によって個人のレベルを表すものですが、一般的には民間資格として分類されています。
また、ファイナンシャルプランナーの資格は、国家資格(FP技能士)と民間資格が混在しています。職業として広まった後に国家資格が設けられた場合などは、こういった状況になることもあります。
民間資格には非常に多くのものがあり、厳しい審査や試験に合格しないと取得できない資格もあります。
その反面、簡易な講座の受講程度で取得できるものや、同じ内容でも複数の団体が資格を設置しているものもあります。
以上のように、資格には大きく分けて3通りありますが、国家資格は国が定めた知識と技術を身につけ、国家試験に合格した上でようやく取得できるものである、という事実があります。
同時に、法律による厳しい規制のもとで管理されています。そういった部分が消費者への信用にも結びつきます。
「はり師・きゅう師は国家資格である」という認知を今後も広めていき、業界全体の信頼度を高めていくことが大切です。