海外で働く

海外で働く

,東洋医学に基づく鍼灸治療は、投薬や外科的治療を伴わない代替医療として、世界で注目されています。

,また、慢性的な症状の解決だけでなく、スポーツや美容など、鍼灸師が活躍する場は広がりを見せ、国内の鍼灸師や鍼灸師を目指す人達も、海外に視野を広げています。

,ただし、海外で鍼灸師として活躍するためには、様々なハードルがあることを理解しておかなくてはいけません。

アメリカの場合

,例として、アメリカで鍼灸師になる場合のプロセスを紹介します。

,アメリカは代替医療への理解が深く、鍼灸もその一つと位置づけられ、鍼灸による治療は大きく進歩しています。高い将来性を持っていることもあり、日本国内の鍼灸師からも注目されています。

,アメリカで鍼灸師の免許を取得するには、ACAOM(鍼灸東洋医学認定委員会)という団体が認定した大学で、大学院卒業資格を取得していることが必須になります。3年程度の履修が必要です。

,この卒業資格を取るには、現地の日本人コーディネーターなどを介して鍼灸大学に留学し、語学の勉強とあわせてアメリカの鍼灸学を学ぶ、という方法などがあります。

,卒業資格取得後に鍼灸免許を取得しますが、アメリカでは州によって免許制度が異なります。多くの州がNCCAOM(全国鍼灸東洋医学認証委員会)の免許制度に準拠していますが、独自の基準を採用している州もあります。

,希望する州の制度に合った免許を取得した後は、職業鍼灸師として就労ビザを取得します。無事にビザが発給されてはじめて、鍼灸師としてアメリカで働くことができるようになります。

他にもさまざまな壁

,上記ではアメリカでの例を紹介しましたが、海外で鍼灸師として働く場合、国によって多くの困難があります。

,アメリカのように制度が整っている国は決められたプロセスをクリアすれば鍼灸師として就業できますが、鍼灸治療そのものが認知されていない国では、業として施術を行うことができない場合があります。

,また、言語の習得も壁になります。海外で働くためには、英語や、就労先の国の公用語をマスターする必要がありますが、鍼灸や東洋医学の概念をうまく伝えながら、問診で患者から情報を聞き出し、的確な治療を行うためには、高いレベルで言語を習得しないといけません。

,ビザの問題もあります。業として鍼灸治療を行う場合、就労が認められるビザが必要となりますが、その国に鍼灸師という職種が存在しなければ、就労ビザの受給は認められないケースがほとんどです。

就労ビザとは

,「ビザ」は、外国人が入国する際に、当該人物に問題がないことを示す証明となるものです。日本語では「査証」と呼ばれます。

,海外渡航の際には原則としてビザが必要ですが、旅行目的などの短期渡航ではほとんどの国がビザなしで入国できます。これは、国によってビザの発行が省略されているからです。

,ちなみに、日本はビザ無しで渡航できる国の数が180ヵ国あり、世界で最も多い国となっています(2018年3月現在)。

,ただし、これは観光目的での短期間の渡航に限られており、それ以外の場合はビザが必要です。働くことを目的に入国を希望する人は、就労ビザが必要になります。

,この「就労ビザ」という言葉は、働くことができるいくつかのビザを総称したもので、その種類は国により異なります。

,たとえば外国人労働者が日本での就労を希望する場合には、以下のようなビザが必要になります。

,<外務省が規定する就業ビザ>
,教授(大学教授、助教授、助手など)
,芸術(作曲家、作詞家、画家、彫刻家、工芸家、写真家など)
,宗教(僧侶、司教、宣教師等の宗教家など)
,報道(新聞記者、雑誌記者、編集者、報道カメラマン、アナウンサーなど)
,経営・管理(会社社長、役員など)
,法律・会計業務(日本の資格を有する弁護士、司法書士、公認会計士、税理士など)
,医療(日本の資格を有する医師、歯科医師、薬剤師、看護師など)
,研究(研究所等の研究員、調査員など)
,教育(小・中・高校の教員など)
,技術・人文知識・国際業務(理工系技術者、IT技術者、外国語教師、通訳、コピーライター、デザイナーなど)
,企業内転勤(同一企業の日本支店(本店)に転勤する者など)
,介護(介護福祉士の資格を有する介護士など)
,興行(演奏家、俳優、歌手、ダンサー、スポーツ選手、モデルなど)
,技能(外国料理の調理師、調教師、パイロット、スポーツ・トレーナー、ソムリエなど)
,(※上記のほか、政治・外交に用いられる外交ビザ・公用ビザもあり)

,上記の中で鍼灸師の仕事に該当するものは、医療、もしくは介護が近い種類であると思われます。

,また、「留学ビザ」で就労できる場合もありますが、国によって制度は異なります。日本で留学する外国人の場合は、学業が優先という前提で、週に28時間までの就労が可能です。

,なお、パスポートは外国での「身分証明書」にあたるものです。入国を許可する効力はありません。

「就労ビザ」を得るのが難しい理由

,日本の就労ビザは上記のような内容ですが、外国の就労ビザも基本的な部分は変わりません。

,このような「就労ビザ」という制度があるのは、どの国においても国内の労働者と労働環境を守る必要があるためで、「その人が自国で働く必要が本当にあるのか」ということを見極めるという目的があります。

,さらに、就労ビザは、申請者の「就労したい」という希望だけでは発給されません。就労を予定している企業や団体がすでに決まっていて、その企業や団体に「ビザスポンサー」となってもらうことが必要です。

,ビザの審査も、申請者と、ビザスポンサーの両方に対して行われます。共に問題なしと判断された場合にビザが発給されますが、審査の途中において国内で就労する必要はないと判断されれば、就労ビザが発給されない場合もあります。

,鍼灸師の仕事は、国によって普及率や認知度に大きな差があるため、就労ビザが無事に発給されるかどうかも国によって異なります。場合によっては審査に数ヵ月を要することもあるようです。

他の手段も

,このように、海外に鍼灸師としての活躍の場を求める場合、多くの困難が伴いますが、適した国を選び、時間・金銭の両面をクリアした上で、鍼灸に対する熱意があれば実現は可能です。

,また、特定の国ではなく、豪華客船などに随行して「船上鍼灸師」として活躍している人もいます。

,青年海外協力隊で海外の鍼灸治療普及にあたる、という方法もあります。年度により異なりますが、2016年度の募集ではケニアとホンジュラスへの配属に関する鍼灸マッサージ師の募集が出されていました。

,鍼灸は手術道具や薬を使わず、人間の持つ自然治癒力を引き出す治療法なので、医療機器が不足している途上国での活躍も期待できます。

,さらに今後は、東京オリンピックの開催で認知度がさらに高まる可能性もあります。スポーツ鍼灸という概念が浸透し、その内容と効果が知られていけば、海外での活躍の場もおのずと広がっていくものと考えられます。

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