自費診療

自費診療

鍼灸院などにおける鍼灸の施術は、「保険診療」と「自費診療」の2つで対応しています。

近年は、自費診療の重要性も注目されており、これからの施術所経営の鍵になってくるとも言われています。 自費診療の基礎知識と、今後の展望を知っておきましょう。

■自費診療は必要か

今後の鍼灸業界では、保険診療のみで院の経営を続けていくのは困難になっていくことも予想されています。

その理由は、保険診療に関する規制が年々厳しくなってきていること、施術所数の増加、他業種との競合、といったものがあります。

参考までに、「はり・きゅうを行う施術所」「あん摩マッサージ指圧、及びはり・きゅうを行う施術所」の合計は、平成18年で52,311件、平成28年では66,079件です。10年間で約126%の伸びになっています。

これに比例して療養費の支給総額も上昇していますが、この中で不正請求の問題が指摘されており、近年では業界の内外で保険請求に対する規則などの厳格化に対する動きがあります。

平成30年からはあはき業界にも受領委任制度が導入され、今後もこういった流れは続いていくものと思われます。

これらをふまえ、保険診療だけに頼るのではなく、自費診療や付随サービスをどれだけ取り入れていくかが、施術所経営のポイントになってくるという意見が交わされています。

ここで一旦、鍼灸の施術所における保険適用ルールを整理してみましょう

■保険が適用できるもの

厚生労働省からの通知では、はり・きゅう施術における保険の適用範囲が以下のように定められています(※一部を抜粋)。

<はり・きゅうの療養費受給要件>
慢性病であって医師による適当な治療手段がないもので、はり・きゅうの施術による効果が期待できるとして医師の同意の下に行われた場合に療養費払の対象としている。
(対象疾患)慢性病で医師の適当な治療手段のないもの。主として、神経痛、リウマチ、及び類似疾患(頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症等)
(医師の同意)療養費の請求には、医師の同意が必要。

上記のように、神経痛やリウマチ、五十肩などといったいわゆる慢性の病気に対して、医師の同意を受けたものであれば保険治療が可能です(慢性に至らない病気についても可能な場合あり)。

■自費診療のポイント

上記で挙げた保険が適用されるもの以外は、全て自費診療の対象となります。

代表的なものとしては、予防医学的側面を持つもの、審美的なもの、リラクゼーションを目的とするもの、などです。

最近では、柔道整復の整骨院などで、一律に保険を適用しない完全自費診療に特化した施術所も増えてきており、それに伴い完全自費の整骨鍼灸院や、自費メニューを中心とした鍼灸施術所も目立つようになってきました。

自費診療は、金額や内容が自由に設定でき、レセプト業務も発生しないため、人的コストを抑えられる、入金が遅れることがない、といった強みがあります。

ただし、自費診療を中心にしての施術所経営は容易ではありません。 他院の事例などの調査を行った上で、経営計画を立て、自費診療へ移行した後も独自性を確立する、PR戦略を行う、などの努力を続けることが必要です。

■付随サービスも

施術サービスを広げるには、美容鍼灸やリラクゼーションのための施術などが一般的です。

他にも、鍼灸とは別の資格を取得し、リフレクソロジーやフェイシャルマッサージなどを付随メニューとして取り入れている施術所もあります。

但しこういったサービスは、一般のエステサロンやリラクゼーションサロン、整体院などで提供しているものと競合することになります。

エステサロン、リラクゼーションサロンといった施設は、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(あはき法)による規制を受けないため、広告も比較的自由に行うことができ、PR戦略にも力を入れています。

■自費診療では「PR」が重要

自院への集客は、施術所にとって重要事項であり、経営者が最も頭を痛めることかもしれません。

集客の向上には広告などのPRが欠かせません。 しかし、鍼灸の施術所の広告は、あはき法によって厳しく規制されています。 以下のような内容です。

<あはき法 第七条より広告の制限部分を抜粋、編集>
あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業もしくはきゅう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、下に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。
1.施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
2.第一条に規定する業務の種類
3.施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
4.施術日又は施術時間
5.その他厚生労働大臣が指定する事項

第1号~第3号に掲げる事項について広告をする場合にも、その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたってはならない。

上記に違反すると、処罰の対象となります。 規則の範囲内で、広告媒体などを駆使して自院の存在とサービス内容を周知することが大切です。

■広告媒体の種類

施術所のPRに利用可能な媒体は、たとえば以下のようなものがあります。

<Webページ>
最も手軽に始められるPR媒体が、Webページです。低コストで、時間もあまりかけずにスタートできます。

自社のWebページを開設する、ブログ形式の広告を出す、SNSを利用するなど、様々な方法があります。予算があれば、Webデザイン会社など専門家に依頼すると手間も軽減できます。

<チラシ>
広告の中でも地味に思える存在ですが、今でも一定のPR力を持った媒体です。

ネットのチラシ制作会社などは少ない枚数にも対応しており、単価を安く抑えられることもあって人気が高まっています。

<フライヤー>
院内での設置が目的の印刷物であれば、広告ではなく「告知物」とみなされるため、施術料や保険適用メニュー、付随サービスなども記載することができます。

サイズを小さく収めたフライヤーなら掲載内容もほど良いボリュームとなり、患者も持ち帰りやすくなります。

<雑誌やフリーペーパー>
純広告、あるいは記事広告という形で、雑誌やフリーペーパーに掲載することも可能です。ただし媒体によっては掲載料が高額になる場合もあります。

こういった紙媒体への掲載も法の規制を受ける上、版元独自の規定もあるので、どの程度までの内容が掲載できるかを事前に確認する必要があります。

<地域の配布物>
自治体などが出している地域の配布物に名刺広告を掲載するという方法もあります。

地域のエリアマップ、防災マップ、○○区だよりなどの公共配布物に協賛企業として広告を入れるもので、それなりのPR効果があります。

このような手段の中から最適な方法を選んで、効果的なPRを続けていくことが重要ですが、自費診療の場合は、従来の集客方法とは違った目線で考えなくてはなりません。

自費診療のセミナーなど学びの場に参加する、専門家・コンサルタントに相談する、異業種との交流を図るなど、新しい手法を取り入れながら、業界の動向も予測しつつ、それに適応していくことが大切です。

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