フィギュアスケート界のトップアスリートたちを支えたもう一人の「アスリート」

フィギュアスケート界のトップアスリートたちを支えたもう一人の「アスリート」

施術業界を明るくする治療家インタビュー。

出水氏にトレーナーの仕事を目指したきっかけや仕事のやりがいについてお話を伺いました。

プロフィール



名 前   :  出水 慎一(でみず しんいち)
生年月日:  1979年1月20日 満38歳
出身校   :  福岡リゾート&スポーツ専門学校、九州医療スポーツ専門学校
趣 味   :  スノーボード・サッカー・ウェイクボード
・フィットネスジムでインストラクターとして勤務後、整骨院で修行し、学校法人国際学園に入社。
(旧:メディカルネットサービス株式会社)
・同法人が運営している九州医療スポーツ専門学校で、国家資格「柔道整復師」を取得。
・資格取得後は整骨院の現場経験を経て、現場指導・店舗立ち上げ・マネジメント・人事採用担当など
 幅広い領域を任される。

元フィギュアスケート選手の小塚崇彦さんや、現在活躍中の宮原知子選手、宇野昌磨選手のトレーナーを務め、 現在はISUグランプリファイナルや全日本フィギュアスケート選手権を控えている。

~ トレーナー活動実績 ~
アメリカデトロイトスケーティングクラブ
関西大学濱田チーム帯同トレーナー
アビスパ福岡ジュニアユース選手パーソナルトレーナー
名古屋グランパスゴールキーパーパーソナルトレーナー

柔道整復師の資格を取得された動機は?



高校時代にサッカーをしていましたが、その当時、怪我が多く復帰しても、なかなかレギュラーに戻れないということがよくありました。

怪我のあと復帰しようとしてもハビリだけでは筋力が落ちてしまい、パフォーマンスが戻らないんですね。

卒業後、怪我の予防のために何かできないかと思い、スポーツトレーナーの資格を取るための専門学校に進学しました。

スポーツトレーナーの資格を取得して初めて勤務したのは、スポーツクラブでした。 そのスポーツクラブに知人が来る時は、パーソナルトレーナーもやってましたね。

しばらく仕事を続けていると、お客さんから「ここが痛い」「ここを動かすと痛い」という声を多く聞くようになりました。

しかし、私は痛みについての勉強はしていないし、治すこともできないんですね。お客さんの悩みに応えるには、さらに専門的な勉強が必要だと思ったんです。

また、将来的にトップアスリートのトレーナーをするためには、国家資格が必要だということも知り、
専門学校の同級生が勤めていた 今の会社を紹介してもらいました。

今の会社で整骨院業務をやりながら、会社のグループである九州医療スポーツ専門学校の柔道整復学科で学び、柔道整復師の国家資格を取得しました。

27歳の時に整骨院の現場指導から、店舗の立ち上げ、店舗の運営マネジメントも任せてもらいました。

今思うと、あの時、国家資格を取りに行こう!と思ったのが、人生の転機ですね。
もし、あのままスポーツジムのトレーナーをしていたら、今の自分はいないですよ。

トップアスリートのスポーツトレーナーには、どうやってなれたのですか?



国際学園グループは、 スポーツ界との繋がりが強く、地域のスポーツイベントを始め、幅広いスポーツイベントに数多く協力しています。
スポーツイベントでのトレーナー活動は、様々な現場経験が出来、勉強になりますから、  積極的にイベントに出て行き、参加される選手たちのケアをさせてもらってました。

そんな中でフィギュア界から会社にスポーツトレーナー派遣依頼の話が来たんです。

派遣先は、小塚崇彦さんでした。 数人のトレーナー候補が小塚さんと面接し、施術も行いましたが、私とフィーリングが合ったようで、採用してもらいました。

フィギュア界でスポーツトレーナーを起用するのは、小塚さんが初めてだと聞きましたが?



そうですね。

当時、小塚さんは先天性の股関節の問題を抱えていて、なかなか満足いく練習もできず、現役を続けようか、止めようかの岐路にありましたが、1年後のソチオリンピックにむけて、選手を続けていきたいという気持ちが強かったんですね。

身体のケアをしながらなら、選手を続けていけるかもしれないと考え、トレーナーを探していたんです。

そんな状況で、まず私がやったことは、小塚さんの気持ちに寄り添うことでした。

身体の状態はすぐには変えられないんですが、メンタルは劇的に瞬時に変わることがあるんです。

今、どんなことが悩みで、どんなことが辛くて、何をネガティブに捕らえているのかということを
小塚さんの表情や会話の流れで つかんでいきました。


小塚さんの場合は、褒めるだけではなく、お尻を叩いて奮起してもらうように誘導することが必要でした。 心に炎がつけば、身体も動くようになるんですね。
実際、小塚さんは、その後、3年間選手生活を続けました。

選手がスポーツトレーナーに求めるものが、垣間見えたようです。

選手をサポートするために必要なスキルを更に詳しく聞かせてください。

人それぞれだとは思いますが、私はいつも笑っているらしいです。(笑)

そのせいで、いつでも話しかけやすいし、何でもわかってくれる、受け入れてくれると感じるそうです。

また、整骨院で目の前にいるお客様を大事にするように世界を相手にするトップアスリートだから、特別に扱うというわけではなく、私の目の前にいる「人」を大事にするということを基本にしています。

さらに、一般の方とアスリートは身体のつくりが違うし、競技によっても筋肉の作られ方が違っていますから、競技についての勉強も必用ですね。

そして、大切なのは、何の為にその競技をしているのか、何が目標なのかを選手に詳しくヒアリングします。

選手によっては、アマチュアであれば「プロになりたい」、プロであれば、「タイトルを取りたい」や「選手生活を長く続けたい」など様々ですからね。
ヒアリングの後は、その目標のために何をやるのかということを細かいところまで話し込み、最終的には本人が考え、本人が選択するということを大事にしています。

トレーナーでもあり、メンタルコーチでもあるわけですね。とても深い関係で、選手とまさに一心同体のように感じます。



身体のケアはもちろんですが、メンタルはとても重要な要素です。 身体と精神は繋がっていますから、バランスがちゃんと取れていないと、なかなか成績が出せません。

特にフィギュアスケートは、メンタルがとても重要な競技です。 高難度のジャンプなどは、心身のバランスが取れていないと失敗しやすいんですよ。
特に試合でのメンタルは、自分でコントロールするしかないのですが、それがとても難しいんですよ。

なので、試合中に自分を客観的に観ることができるように、「どうしたい」「どうなりたい」「そのために何をやる」「どうやる」など細分化して、精神がマイナスになる原因を全て潰していくんです。
それをやっていくと、できない理由がなくなります。成功する自分しか存在しなくなるんです。

トレーナーは、選手を支える、選手を勝たせることが仕事ですから、最高の舞台裏に立つ黒子なんですよ。選手のために何が必要かを24時間365日考えることが大切だと思っています。

また、トレーナーになったきっかけを会社が作ってくれましたから、その後は自分自身が日々、努力するし、選手と共に進化していくことが、会社への恩返しにもなると考えています。

トレーナーとして、忘れられないエピソードを教えてください。



毎シーズン色々ありますが、小塚さんの場合は、ソチの選考に落ちた瞬間が、今でも忘れられません。

私自身も とても悔しかったし、自分の実力が足りなかったと痛感した瞬間でした。

また、フリーで3位に入った大会も忘れられませんね。ほぼノーミスで演技を終えた瞬間、ガッツポーズをした彼を見て、とても感動しました。それまでに色々な背景があったので、とても重みのある3位でした。

宮原選手の場合は、グランプリファイナルで2位を2回取りましたが、どちらもその場にいましたし、全日本三連覇のときにも一緒にいました。とても嬉しかったですね。

今季、宮原選手は、ケガをしたので、ファンの皆さんにも大変ご心配をおかけしましたが、私自身にとっては、さらに勉強すべき領域が 大きく広がりました。

まずは、どんな小さな変化も見逃さないための知識が、もっともっと必要です。
そしてその変化に対応できる自分のケアへの自信を強く持たなければと切実に感じました。
そのような状況で、先月のNHK杯で復帰できて、本当に良かったと思っています。
結果を残すために復帰するまでにしておきたいという目標を彼女は、全部クリアしたんですよ。
その熱意に私も心が熱くなりましたし、NHK杯では、正直ホットしたという安堵感と、絶対次に繋がるという期待感が入り混じりました。全日本で優勝したら、私は絶対に泣くでしょうね。(笑)

最後にアスリートのトレーナーを目指している人達に 一言お願いします。



何故、「アスリートのケアをするトレーナーになろうと思ったのか?」という動機がとても大事です。

なりたいと思った意識が、強いエネルギーになるので、それを忘れないでほしい。

また、何をしたら近づけるのか、どう行動したらいいのかを周りの人に相談するんです。
自分の思いを声に出して伝え続けることで、変化が起こりますから。

そして、常に感謝を忘れず、行動し続ければ、必ず自分がやりたいと思っていることができますよ。


< あとがき >

スポーツトレーナーは、 選手のフィジカルな面でのトレーニングやコンディションを管理する仕事だと
思っていましたが、出水トレーナーにお話を伺って分かったのは、メンタルのケアやサポート、そしてメンタルを鍛えるためのトレーニングも重要な仕事だということでした。
選手が自分の身体を預けるのですから、当然、心を預けられる信頼厚いトレーナーでなければ、難しいですね。
出水トレーナーは、「同じ空間にいるだけで心が和む」温かい方で、何事にも真摯に向き合う深い
まなざしの持ち主でした。
選手の方々の活躍はもちろんですが、今後の出水トレーナーのさらなる進化を追い続けたいと思います。





■関連サイト
・出水トレーナーのデミ~ジャ~ナハナシ
http://zero100st-demmy.com/

・ZERO100プロフェッショナルトレーナー
http://zero100project.com/about.html

・九州医療スポーツ専門学校
https://www.kmsv.jp/

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